★中年期と高齢期の栄養★この文章は、2005年度、東京都某区の消費生活通信講座のテキスト用に、書いたものです。5) 運動・栄養・休養 ● 健康な状態とは 食事をおいしくいただけて、充実した一日を過ごし、心地よい疲労感を感 じ、ぐっすり眠り、翌朝すっきりと目覚める。こんな毎日を過ごしていた ら、健康な状態といえるのではないでしょうか。このような状態を保つため には、運動・栄養・休養のどれもがバランスよく、そして心地よい状態にある ことが必要です。 ● 中年期と高齢期の栄養 中年期には、脂肪や動物性たんぱく質のとり過ぎに気をつけ、肥満を防ぐ ことが生活習慣病の予防につながるという認識がおありかと思います。そし て高齢期になっても引き続き同様の食事療法をつづけていらっしゃるかもし れません。 ところが、中年期に認められている食事療法の効果が、高齢期には当てはま らないことがわかってきました。なぜかというと、中年期に生活習慣病を克 服できなかった人は、早くに三途の川を渡ってしまい、高齢者は、「人生の 勝者」と位置づけられ、危険因子の影響は大きくうすめられてしまうからで す。 そして、高齢期ではむしろ低栄養が老化を加速させ、寿命を縮めることがわ かってきました。70歳の地域高齢者集団を10年間追跡し、食習慣と余命 の関係を分析した研究調査によると、油脂類、牛乳を良く取っている高齢者 ほど生存率が高いことがわかりました。老化を遅らせ、余命を伸ばすために は、多様な動物性たんぱく質食品と油脂類が極めて重要な食品群であるとい えます。 肉類や油脂類は血清コレステロール値を上げるのではと心配する向きがあり ますが、75歳以上の女性では、血清コレステロール値の低い人ほど生命予 後が悪く、男性では総脂肪のリスクとは無関係であるという研究結果が出て います。 動物性たんぱく質や油脂類をとるためには、しっかりと食べることが必要で す。そのためにも、運動で身体を動かすことが大切です。 低栄養予防のための食生活指針 1. 三食をバランスよくとり、欠食は絶対さける。 2. 動物性たんぱく質を十分に摂取する。 3. 肉と魚の摂取は1:1程度の割合にする。 4. 肉は、さまざまな種類を摂取し、偏らないようにする。 5. 油脂類の摂取が不足しないよう注意する。 6. 牛乳は、毎日200ml以上飲むようにする。 7. 野菜は、緑黄色野菜、根野菜など豊富な種類を毎日食べる。 火を通して摂取量を確保する。 8. 食欲がないときはとくにおかずを先に食べごはんを残す。 9. 食材の調理法や保存法を習熟する。 10. 酢、香辛料、香り野菜を十分に取り入れる。 11. 調味料を上手に使いおいしく食べる。 12. 和風、中華、洋風とさまざまな料理を取り入れる。 13. 会食の機会を豊富につくる。 14. かむ力を維持するため義歯は定期的に点検を受ける。 15. 健康情報を積極的に取り入れる。 熊谷修 NHKスペシャル、65歳からの食卓、老化への挑戦、NHK出版、PP1 49-188、2004から引用 |